私が母を看取ったのは12月上旬でした。
初七日を終えて少し落ち着いたときには12月も中旬になっていました。
毎年なら年賀状を書き終えて後は出すだけの日程でしたが、それどころではなく日が過ぎて行きました。
友人から喪中はがきが届いて初めて自分も出さなければ、と思い仕事帰りに駅前に昔からある印刷所を訪ねました。
当時はまだ家庭にプリンタが普及する以前だったので、手書き以外は印刷所にお願いするのが当たり前の時代でした。
ご夫婦二人で経営されているらしい小さな印刷所で、対応してくれたのは六十代くらいの女性でした。
「すいませんが、喪中はがきを50枚お願いできませんか?」
「喪中はがき?今頃?何を考えて?普通秋頃には注文するものでしょう?
今まで何をぼんやりしてたの?それも50枚くらい今更印刷するのも大変なのよね。」
「すいません。無理でしょうか?」
「もう年賀状も印刷が終わる時期だから、普通は受けないんだけど。ところでお身内はいつ亡くなったの?」
「先週です。」
「え?あ、ごめんなさい。それなら仕方ないですね。三日ちょうだい。それで印刷仕上げておくから。」
「それから三日ではがきは出来上がりました。」
そして受け取りのときに、
「年末に大変だったでしょう。気を落とさないでね。」と励まされました。
その日のうちに宛名を書いて翌朝投函しましたが、翌年元日には何枚か年賀状が届きました。
喪中はがきは余裕を持って準備できる人ばかりとは限らないのです。
ここで気が付いたのですが、街の店舗や写真屋さんでの喪中はがきは出来るのがけっこう遅い場合があります。
今回は3日かかりましたが、ネット注文できるところだと最短翌日発送も可能なので2日で到着させられることもできるわけですよね。